当ブログを開設してから1年半ほどが経ちました。早いものです。
開設当初はアメリカのボーディングスクール進学関連情報を中心に書いてましたが、上の双子は今年大学卒業、下の子は高校3年生になりいよいよアメリカ大学受験準備が本格化する時期に差し掛かったということで、我が家の話題もアメリカ大学受験が中心となりつつあります。
ということで、今回はアメリカ大学進学の中でも特に重要なテーマである「スタンダードテスト(SATやACT)」、その中でも特に日本人学生にとっては気になるテーマと思われる”Test-Optional”と”Test-Blind”について掘り下げてみたいと思います。
“Test-Optional”と”Test-Blind”
アメリカ大学の受験プロセスにおいて、スタンダードテストスコアはGPA(学校の成績)と並ぶ重要な選考要件の一つです。「数値化」されたものであるからこそ、比較もできるし、難易度も測れるし、スコアアップを目指しみんな必死になるのです。
が、コロナ直後はテスト自体が受けれなくなってしまうという非常事態が生じたため、アイビーリーグの名門校も含めた1800を超える大学が「じゃあスタンダードテストスコア無しでも出願受け付けますよ」という特別措置を施しました。この辺の柔軟性は流石アメリカですよね。日本の大学受験ではコロナでも「共通テスト無し」とはなりませんでしたからね。
その後普通にスタンダードテストを受験できる状態に戻りましたが、アイビーリーグ名門校やスタンフォードも含めた殆どの大学が特別措置を継続しています。その中身は大きく2つのタイプに分かれており、それが”Test-Optional”と”Test-Blind”なのです。以下、その2つの違いについて見ていきましょう。
Test-Optional
Test-Optionalとは、「出願の際、スタンダードテストスコア提出はマストではないが、出願書類の中にテストスコアが含まれている場合は『参考資料』として考慮することもある」というものです。
Test-Blind
一方、”Test-Blind”では、スタンダートテストスコアは一切選考材料とはなりません。コモンアプリケーションフォームにスタンダードテストスコアを入力しても、そのスコアは”Test-Blind”の大学にレポートされません。選考プロセスは、その他の要素、つまりGPA、推薦状、課外活動、研究プロジェクト、エッセー等のみに基づいて実施されます。
“Test-Optional”、”Test-Blind”を採用する大学は?
では、これらの特別措置を採用する大学は一体どこなのでしょうか?詳細なリストはこちらからご確認いただけますが、一言でいうと、”Test-Optional”はアイビーリーグの名門校を含めた殆どの大学が採用、一方で”Test-Blind”はCaltech、カリフォルニア大学の全てのキャンパス(UCバークレー、UCLA、USCD等の名門校も含む)、カリフォルニア州立大学の全てのキャンパス等が該当しますが、カリフォルニア州外では採用は限定的で、アイビーリーグだとCornellの3学部(農学生命科学部、ビジネス学部、建築芸術計画学部)のみが採用しているくらいです(先ほど紹介したリストではCornellは”Test-Optional”に分類されています。全学部が”Test-Blind”ではないからでしょうか?いずれにせよ、取り扱いは受験年度によって変わり得るものなので、最終確認はご自身の責任にてお願いします)。
大学にとってのインセンティブは?
ところで、大学にとっては特別措置を続けるインセンティブって一体何でしょう?
一つは「多様性を高めること」、もう一つは出願のハードルを下げることで「受験料で稼ぐこと」、そして「合格率を下げる(Acceptance Rate)ことで大学のレピュテーションを高める」です。
そもそも、コロナ前から特別措置自体は存在していました。が、基本コンセプトは「経済的に恵まれない背景や疎外されたコミュニティに所属する学生にも大学進学の機会を与えるため」でした。
日本の共通テストとは異なり、アメリカのスタンダードテストは「複数回受験可能、その中から最高スコアの提出が可能」です。それはすなわち1回につき15,000円程度かかるテストを何回も受験する余裕がなかったり、且つスコアアップのための家庭教師・塾代を払えない学生がより不利になりやすい、という負の側面があります。そういう学生を特別措置で救済すれば、大学は多様性が高まり、活気に満ち、包括的で革新的な機関になるだろうと。
コロナによってテスト受験が不可能になり、「特別措置」の採用はより一般化しました。結果として、実際に大学の多様性は高まったようです。また、CornellはTest-Blind(彼らは”Score-Free”という別の呼び方をしています)の延長措置を早々に発表しましたが、背景には大学および学生がどう変わったか、これ自体を研究対象として今後に活かそうというような動きがあるようです(さすがですね)。
一方で、出願のハードルを下げることで大学側としては「受験ビジネス」の妙味が増したとか、多くの学生が受験することになるので「合格率が下がる→大学の難易度が高くなったように見える」、ってことは、大学側としては、学生の為というよりも、レピュテーション・価値・ブランド力を高めるための戦略(ストレートに言えば「金儲け主義」)として特別措置を導入しているのでは?といった違った角度の話も出てきているようです。まあ特別措置は裕福ではなかったりテストが苦手な学生にとってはメリットにもなる訳で、一概に大学だけが得している、とかいう話でもないですが、受験する学生側の立場としてはそのような面があるということも認識しておいた方が良いでしょう。
結局スコアは提出すべき?
で、結局テストは受けた方がいいのでしょうか?
“Test-Blind”の大学に関してはNoです。受けなくていいです。テストスコアは入学後のコース選択に影響するという学校もありますが、入学選考プロセスのみに限って言えば不要です。
ただ、志望校選定の戦略として”Test-Blind”の学校しか受けない、ということにはあまりならないでしょうから、この後を読むとお分かりだと思いますが、結局は受けた方がいい、となりますかね。
一方、”Test-Optional”の大学に関しては、Yesです。受けた方がいいです。特に難易度が高い学校になればなるほどスコア提出した方が良いです。
難易度が高い学校は、そもそもテストスコア、GPAは高くて当たり前、その上で課外活動、研究活動、推薦状、エッセーその他諸々の部分で入試担当官に如何にアピールするか、という激しく厳しい戦いを勝ち上がったもののみが合格するという世界です。
もちろん、”Test-Optional”なので、テストスコアを提出しなくても選考のテーブルには乗せてくれますし、三男のカレッジカウンセラー曰く、”Test-Optional”校にスコア提出無しで合格した学生もいないことはないようですが、その確率が何%なのかとかいうデータは無いですし、私が情報収集する限り、巷のカウンセラーの殆どが「受けるべき」と推奨しています。こちらの動画(15:30までスキップ)でも受けた方がいいと言っています。英語ですが、参考になるのでよかったらどうぞ。
とか言いながら、我が家の三男はスコア提出せずに”Test-Optional”校にも果敢に出願する心積もりのようです。「スタンダードテストのように様々な質問にパッパと答えなければならないスタイルでは自分の良さは測れない。だから、それ以外で勝負する」と。言うねえ。。。長男次男はテストスコア上げる努力も最後までした方が絶対いい、と必死で説得を試みていますが。。。Will see…